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東京地方裁判所 昭和33年(行)25号 判決 1958年7月10日

東京都世田谷区太子堂町三百九十番地

原告

三重建設株式会社

右代表者代表取締役

上村鉄三

東京都千代田区大手町一丁目七番地

被告

東京国税局長

篠川正次

右指定代理人

広木重喜

綾部康弘

簑輪恵一

喜井晨男

右当事者間の昭和三十三年(行)第二五号法人税再審査請求事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、原告の申立

「被告が原告に対し昭和三十二年十二月十日なした原告の昭和二十九年度及び同三十年度分の法人税に関する審査請求を却下する旨の各決定はこれを取消す」との判決を求める。

第二、被告の申立

主文同旨の判決を求める。

第三、請求の原因

一、訴外世田谷税務署長は昭和三十二年二月原告に対し原告の昭和二十九年度及び同三十年度の法人税につき各更正処分をしたので、原告は昭和三十二年三月二十三日右署長に対し右各処分につき異議の申立をなしたところ、同署長は右各申立を棄却した。

そこで原告は同年七年二十二日更に被告に対し右処分につき再審査の請求をなしたところ、被告は昭和三十二年十二月十日その請求の方式に欠陥があるとして右請求を各却下し、その頃原告に通知した。

二、しかしながら被告の右各処分は原告の請求につき実質的な審理をなさずになした違法なものであるから、その取消を求めるため本訴に及んだ。

第四、被告の答弁及び主張

一、請求の原因第一項は認め、第二項は争う。

二、原告提出の本件再審査請求書には法人税法施行規則第三十四条所定の証拠書類の添付がなかつた。そこで被告は昭和三十二年九月三日原告に対し貸借対照表、損益計算書、財産目録を同月十四日までに東京都千代田区東京国税局協議団本部まで提出するよう補正を命じたが原告はこれに応じなかつた。よつて被告は同年十二月十日原告の再審査の請求を却下する旨の決定をしてこれを原告に通知したのである。

したがつて本件決定は適法である。

第五、被告の主張に対する原告の答弁

原告が提出した再審査請求書に証拠書類の添付がなかつたこと、被告主張のような補正の通知があつたこと及び原告が補正をしなかつたことは認める。

第六、証拠

被告指定代理人は乙第一、第二号証を提出し、原告は乙号各証の成立を認めた。

理由

一、請求の原因第一項は当事者間に争がない。

二、そこで被告のなした本件各決定が違法かどうかについて判断する。

法人税法施行規則第三十四条によれば審査の請求は一定の事項を記載した審査請求書に証拠書類を添付してこれをなすべきものであるところ、原告が昭和二十九年度及び同三十年度分の法人税に関する本件再審査請求(法人税法にいう審査の請求に相当すると解すべきである)にあたり、請求書(成立に争のない乙第一号証によれば原告は同一書面により各年度分の法人税につき再審査の請求をなしたことが認められる)に証拠書類の添付を欠いていたことは当事者間に争がないから、右請求はその方式に欠陥があつたというべきであり、この欠陥を補正させるため、被告が昭和三十二年九月三日原告に対し貸借対照表、損益計算書、財産目録を同月十四日までに東京国税局協議団本部まで提出するよう命じたところ、原告がこれに応じなかつたことは当事者間に争がないから、被告が原告の請求につき実質的な審理に入ることなく、法人税法第三十五条第五項第一号により原告の請求を各却下したことは何ら違法ではないといわなければならない。

三、よつて原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 石井玄 裁判官 越山安久)

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